今回はTetsuシリーズが生まれるまでのことを紹介します。
そもそも、町工場のナウ産業が、なぜ鉄鍋を作ろうと思ったか。
そこには3つのきっかけがありました。
1.社長が代替わりして「何かしなきゃ」と思った
ナウ産業は、現社長のお父さんである会長が1971年に設立しました。
社名は、まんま社長の苗字「今(こん)」に由来しています。名刺交換をしたときに「私、今なんで、ナウ産業です」というのが社長のお決まりの挨拶。大体の方は、これでナウ産業のことを覚えてくれます。
「ナウい」、「〜なう」など、絶妙に流行にも絡むステキな名前ですよね。
2代目として現社長が就任したのが2015年のこと。社長は当時、使命感から会社の飛躍を願って「何かしなくちゃ」と思っていたそうです。
BtoCはそのうちのひとつでした。
そして、市役所がタイミングよくセミナーを開いたことで運命は大きく動き出したのです。このセミナーで講師を務めていたのが、デザインプロデュースを手がけるアッシュコンセプトの名児耶代表でした。
2.地元・綾瀬のご当地グルメを食べさせたい
ナウ産業のある綾瀬市では、2013年ごろからロケ誘致に向けた活動が盛んになりました。綾瀬市商工会青年部の部長も務めた社長にとって、まちづくりの活動はとても身近なものです。社長は、ロケの受け入れ等を行う市民活動団体「あやせブタロケ隊」のメンバーとしても活動しています。
ブタロケ隊の活動で浮上したのが「『とんすき』をロケ弁として食べさせたい」という想い。「とんすき」とは豚のすき焼き風鍋で、綾瀬市のローカルグルメです。すき焼きといえば鉄鍋。そこでブタロケ隊メンバーから、今社長に白羽の矢が立ちました。
鍋の形を作るなんてことは朝飯前。
でも、そこにどんな工夫ができるかな…。
生まれ育った綾瀬の、ご当地グルメを美味しく食べてもらいたい…!
地元愛と職人魂が、社長の心を震わせました。
3.自分たちの技術が喜ばれるところを見たい
ナウ産業の手がける製品は、主に自動車や建築に使われる部品です。そのため、なかなか一般の方と接点のある物ではありません。「この会社は何を作っているの?」と聞かれても一言では答えられず、作ったものが喜ばれるシーンに出会うこともなかなかありませんでした。
会社を率いる中で、「職人達のやりがいがもっとあれば」という想いが社長の中にはありました。そして、一般の方々に使ってもらえるBtoC商品にはそのチャンスがあると思ったのです。
工場見学やBtoC商品の開発などを通して、職人と一般の方とが触れ合う機会ができたことで、モチベーションのアップになったことは間違いありません。
…ということで、ナウ産業が鉄鍋を作ることになりました。
なんと、ここから3年もかかって、第1作目のTetsu Nabeができることになります。この間にもいろいろなことがありました。
長くなりますので、それはまた別の回で。
ちなみに、タイトル写真も商品化されなかったボツ作。
創成期は、社長が孤軍奮闘した時代でもありました。
忙しい本業の傍らで、初めてのことを勉強しながらの商品づくり。本気で良いものを作りたいと思っていたからこそ、長い時間をかけて頑張ってこれました。
「Tetsu」が職人や社長の想いのこもった製品であること、ちょっとでも伝わっていたら嬉しいです。